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(文責:宮下和也)
Aさんは数年前から、職場の健康診断で血糖値が少し高いと言われていました。やや肥満気味で、
タバコは1日20本、運動はたまにゴルフに行く程度です。血圧は、正常高値血圧です。血糖値は、
正常値よりは高値でしたが、約1ヶ月間の血糖値の平均を反映するヘモグロビンA1cは正常値です。
ただちには、糖尿病とは診断できません。
ブドウ糖負荷試験を行ないましたところ、血糖曲線は境界型を示しましたが、インスリン分泌は
むしろ高反応気味です。インスリン抵抗性(インスリンの効き目が悪い状態)があると判断されました。
また、総コレステロール・中性脂肪が軽度高値で、HDLコレステロールは低値です。
血糖曲線が境界型であっても、まれには眼底出血が先行する糖尿病もありますので、念のため、
眼科で検査してもらいましたところ、糖尿病特有の変化はありませんでしたが、軽い動脈硬化を認め
ました。狭心痛などはなく、心電図異常もありませんが、眼科的診断は直接血管を見ることに基づいて
いますので、正確です。
Aさんのように、個々の検査値異常は軽度でありながら、それらがいくつか重なることによって、
高率に動脈硬化が引き起こされる病態を、インスリン抵抗性症候群またはマルチプル・リスクファクター
症候群と呼びます。軽度の検査値異常で、自覚症状もないため、しばしば見過ごされやすく、心筋梗塞
などを生じてから、始めて事の重大さに気づく場合も少なくありません。