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お 知 ら せ

(1) インフルエンザ速報2004-2005

2004-2005シーズンのインフルエンザは、流行の開始は非常に早かった(例年より約2ヵ月も早かった)のですが、暖冬の影響のためか、ほとんど流行が拡大しませんでした。
2005年1月末から、急速に流行が拡大し、例年より約1ヵ月遅れで2月下旬から3月上旬にピークを迎えました。
その後、次第に終息に向かい、4月の時点では、散発的な発生を見る程度になっています。

例年は、A香港型が流行の主流を占めますが、2004-2005シーズンは、むしろ、B型が主流で、A香港型・Aソ連型も混合流行するという状況でした。
流行規模は、最近11年間で最大と言われています。
このような大きな流行の要因としては、以下のような点が考えられます。
     (1) 近年、B型インフルエンザの大きな流行を経験していなかったため、もともと免疫を持っていた人が少なかった。
     (2) インフルエンザワクチンの接種を受けた人数が昨シーズンよりもむしろ減少した。
(*注)
     (3) 暖冬の影響で、B型インフルエンザウイルスの活動が活発になりやすい気象条件が続いた。

          (*注) 今シーズン、インフルエンザワクチンの接種者数が昨シーズンよりも減少した理由は、以下のような要因が考えられます。
              (1) SARSや鳥インフルエンザ対策の叫ばれた2003-2004シーズンと異なり、今シーズンはSARSや鳥インフルエンザ対策のために接種を受ける人が少なかった。
              (2) インフルエンザワクチンの効果は100%ではないため、接種を受けても罹患することがある。 特に、2003-2004シーズンは、流行の主流を占めたA香港型は、
                           非ワクチン株の福建タイプであった。つまり「はずれ」てしまったため効果が弱く、その結果、インフルエンザワクチンは効かないという誤った印象を与えた。
              (3) インフルエンザワクチンに反対する狂信的な考え方の持ち主の煽動的な誤った意見が、人気のある漫画雑誌や週刊誌などに掲載された。
                 その読者たちが、インフルエンザワクチン接種に対して、誤解を抱いてしまった。

 B型インフルエンザは、A型に比較して軽症と言われることがしばしばありますが、実際には、A型インフルエンザと比べて、重篤度に大きな差違はないのです。
近年、B型インフルエンザによる大きな被害の経験が少なかったのは、単に、B型インフルエンザの大きな流行がなかったからに過ぎません。
また、症状の点では、B型インフルエンザでは、A型インフルエンザよりも、消化器症状を示す率がやや高いとは言えますが、高熱・激しい全身倦怠感・全身の筋肉痛・全身の関節痛・咳・鼻汁等のインフルエンザの典型的な症状には、基本的には、違いはありません。
ただし、B型インフルエンザのほうが、A型インフルエンザよりも、最高体温はやや低いものの、発熱期間が約2日程度長い、という特徴があります。

また、インフルエンザワクチンの効果の点でも、B型インフルエンザは、A型インフルエンザと比較して、ワクチンの効果が弱いことが知られています。

さらに、抗インフルエンザウイルス薬の効果の点でも、元来B型インフルエンザは発熱期間がA型インフルエンザよりも長いため、解熱までに要する時間も、A型インフルエンザよりも、長くかかるのです。
そのため、一見すると、B型インフルエンザに対しては抗インフルエンザウイルス薬の効果が弱いような印象を与えてしまいがちなのですが、実際には、B型でも、A型とほぼ同様に、発熱期間および罹病期間の短縮効果(約2日の短縮効果)があるのです。

なお、抗インフルエンザウイルス薬の投与により、耐性ウイルスが誘導される可能性があります。
塩酸アマンタジン(商品名シンメトレル、A型インフルエンザのみに有効)の場合は、投与開始から2-3日で耐性ウイルスが高頻度に誘導されること、また、鳥インフルエンザH5N1では、すでに耐性化しているため、無効であることが知られています。
リン酸オセルタミビル(商品名タミフル、A・B両型に有効)は、近年、インフルエンザ治療の主役として広く使用されていますが、小児科領域では、耐性ウイルスがでは高率に出現することが、すでに報告されています。
ザナミビル(商品名リレンザ、A・B両型に有効)は、内服薬ではなく、ドライパウダーの吸入薬のため、適応が原則的に13歳以上であること、吸入指導が必要なため手間を要すること、咳き込んでいる場合には吸入が難しいこと、などから、リン酸オセルタミビルよりも使用件数が少ないためか、今のところ、耐性ウイルスはほとんど見られていません。

いずれにしても、抗インフルエンザウイルス薬を乱用すれば、耐性ウイルスの蔓延につながる恐れがあります。
適応症例をよく見極めて、適正に使用することが求められます。

具体的な流行状況は、以下の通りです。

2004年10月04日、宮下クリニックでは、2004-2005シーズン最初のインフルエンザ患者を確認しました。
群馬県在住の成人女性で、海外等への渡航歴はありません。10月04日昼頃より咽頭痛・悪寒・関節痛が出現、午後2時頃から発熱し、午後5時頃来院、体温39度。迅速検査により、B型インフルエンザ陽性が確認されました。

2004年10月26日、宮下クリニックでは2004-2005シーズン第2例目のインフルエンザ患者を確認しました。
群馬県在住の成人女性で、前日にディズニーランドに行き、10月26日より咽頭痛・悪寒・関節痛・発熱が出現し受診。迅速検査により、A型インフルエンザ陽性が確認されました。

2004年10月、大阪府では、インフルエンザによる学級閉鎖が行われました。
2004年11月、群馬県太田市でも、11月1日頃からインフルエンザの流行が始まり、11月9日より学級閉鎖。
2004年11月、群馬県前橋市でも、11月下旬頃からインフルエンザの流行が始まり、11月30日より学級閉鎖。

国立感染症研究所感染症情報センターによれば、今シーズンのウイルス分離状況は、以下の通り、B型・A香港型・Aソ連型とも、ワクチン株に一致していると報告されています。(IASR速報記事(ウイルス))

2004年11月、兵庫県の集団発生からB型
2004年11月、岡山県の集団発生からA/H1型(ソ連型)
2004年10月、東京都の集団発生からA/H3N2型(香港型)
2004年12月、埼玉県でA/H1N1型(ソ連型)
2004年12月、仙台市でA/H1(ソ連型)とA/H3型(香港型)

また、各地で集団発生、学級閉鎖が見られ、現在、流行のピークであると考えられます。

宮下クリックでは、下表のように、2004年10月04日から、インフルエンザ患者を確認しました。

なお、2002-2003シーズン、および、2004-2004シーズンの治療成績から、迅速検査とPCR法によるインフルエンザウイルス遺伝子検出は非常に良く一致し、感度および特異性は99%以上であること、発症から3時間という発病の極早期でも迅速検査で明らかに陽性に検出されることが、確認されています。

宮下クリニックにおけるインフルエンザ患者数(発症48時間以内に迅速検査で陽性を確認)
  ただし、( )内は小児の患者数

 

41W

10/04-10/10

-

44W

10/25-10/31

45W

11/01-11/07

-

47W

11/15-11/21

48W

11/22-11/28

49W

11/29-12/05

50W

12/06-12/12

51W

12/13-12/19

52W

12/20-12/26

53W/1W

12/27-01/02

A

0(0)

-

1(0)

0(0)

-

0(0)

0(0)

0(0)

0(0)

0(0)

0(0)

0(0)

B

1(0)

-

0(0)

0(0)

-

0(0)

0(0)

0(0)

0(0)

0(0)

0(0)

1(1)

 

2W

01/03-01/09

3W

01/10-01/16

4W

01/17-01/23

5W

01/24-01/30

6W

01/31-02/06

7W

02/07-02/13

8W

02/14-02/20

9W

02/21-02/27

10W

02/28-03/06

11W

03/07-03/13

12W

03/14-03/20

A

1(0)

0(0)

3(1)

6(3)

8(4)

9(6)

7(5)

16(13)

32(20)

22(13)

5(1)

B

0(0)

1(0)

1(1)

4(4)

17(11)

29(17)

36(20)

41(23)

37(18)

29(18)

14(7)

13W

03/21-03/29

14W

03/28-04/03

15W

04/04-04/10

16W

04/11-04/17

17W

04/18-

A

3(1)

6(0)

1(1)

2(0)

B

5(2)

2(0)

3(2)

2(0)

(2) 《新型?》インフルエンザ脳症とタミフルの報道について

2005年2月24日(木)、痙攣や意識障害を伴わずに睡眠中に突然死する「インフルエンザ脳症の新しいタイプ」についての、マスコミ報道がありました。
新聞報道では、
  「死亡した6人のうち4人は、抗ウイルス薬オセルタミビル(商品名タミフル)を服用、その3―7時間後に死亡」
  「タミフルは、・・・動物実験で大量投与を受けた幼若ラットが死亡、脳から高濃度の薬剤成分が検出・・・1歳未満には投薬しないよう警告していた。」
 
と記載されており、タミフルが新型脳症の原因であると誤解を与えかねない表現がされています。

もしも、たとえば、死亡例について病理解剖が行われて脳内から高濃度のタミフルが検出されたのであれば、因果関係が証明されたと言えると考えられますが、現時点では、そのような報告は全くありません。

現時点では、情報が乏しく、100%否定することはできませんが、タミフルが新型脳症の原因とする根拠は全くありません。

1昨シーズンから流行しているA香港の福建タイプなど、ウイルス側の問題なのかもしれませんが、詳しい情報が明らかでないため、明確なことは言えません。
そもそも、インフルエンザ脳症の頻度は非常に稀であり、発症件数も非常に少ないため、因果関係があるかどうかを明らかにすることは、疫学調査のみでは難しい面があるのです。
むしろ、タミフルの投与は、インフルエンザの一般的な合併症を減らすことが報告されていますので、脳症についても、減らしている可能性があるかもしれないのですが、インフルエンザ脳症の発症件数が非常に少ないため、立証することは容易ではないのです。

今回のことから言えるのは、「タミフルを投与しても、インフルエンザ脳症の発症を食い止めることは、完全にはできない」、ということのみです。
言い方を変えますと、私達が従来から指摘している通り
、インフルエンザに罹ってから抗インフルエンザウイルス薬で治療すれば良い、などとという考え方は、全く誤った考え方である、と言えるでしょう。

インフルエンザワクチンが、インフルエンザ脳症を防ぐことができるかどうかは、現在のところ実証されてはいません。
しかし、
インフルエンザに罹患しない限り、インフルエンザ脳症を発症することはあり得ません。
したがって、インフルエンザワクチンによってインフルエンザを予防することが、インフルエンザ脳症の予防の点からも、極めて重要である、と言えるでしょう。

(3) 2004−2005シーズンのインフルエンザワクチン

宮下クリニックでは、2004−2005シーズンのインフルエンザ予防接種を、例年同様、10月04日より開始しました。
昨シーズン同様、ワクチンは、チメロサール(防腐剤の水銀製剤)を含有しないタイプのものを使用しました。
接種の最適時期は、10月から11月までです。

平成16年度のインフルエンザHAワクチン製造株は、以下の通りです。(平成16年5月13日 薬食発第0513003号)

     A/ソ連型株 A/New Caledonia/20/99 (H1N1)
     A/香港型株 A/Wyoming/3/2003(H3N2)
     B型株    B/Shanghai/361/2002

A/香港型株は、2002-2003シーズンから流行し始め、2003-2004シーズンでは世界的な主流になった「福建タイプ」に対応するために、A/Fujian/411/202類似ウイルス株であるA/Wyoming/3/2003(H3N2)が選定されました。

B型株も、これまで使われたB/Victoria系ウイルス株のB/Shandong/7/97から、B/Yamagata系ウイルス株に変更になっています。
2003-2004シーズンに分離されたB型インフルエンザウイルスのほとんどがB/Yamagata系に属していたこと、かつ、B/Yamagata系ウイルス株に対する抗体保有率が低いことなどから、選定されました。

A/ソ連型株は、これまで同じです。

インフルエンザの最良の対策は、流行前のワクチン接種です。

インフルエンザワクチンの効果は、接種完了後約1ヵ月程経ってから現れ、約半年後には低下してしまうため、毎年接種が必要です。インフルエンザは例年12月頃から流行しますので、11月末までにはワクチン接種を完了することが重要です。
接種回数は、13歳未満では1〜4週間隔(できる限り3週間以上あける)で2回、13歳以上では(個人の免疫状況などを勘案しながら)1〜2回です。
流行開始の4週間前には接種を完了することが重要ですので、接種時期は、10月上旬から11月下旬までの間が理想的です。
小児などで2回接種を受ける場合には、10月に1回目、11月に2回目を受けるようにしましょう。

接種が特に推奨されているのは次の人たちです。

ハイリスク群 (インフルエンザに罹患した場合、重篤化し、入院や死亡の危険性が高い群)

    (1) 50歳以上の人 (65歳以上は法定接種)
    (2) 施設入所者
    (3) 基礎疾患を有す小児及び成人(気管支喘息・肺気腫・心疾患・糖尿病・腎不全等)
    (4) 妊婦 (*注1)
    (5) 乳幼児(特に6〜23ヶ月)(*注2)

ハイリスク群に伝染させる可能性が高い群  

    (1) 医療・介護従事者及び施設従業員
    (2) ハイリスク者の同居者(小児も含む)
    (3) 乳幼児(0〜23ヵ月、特に0〜5ヵ月)の同居者および保育者(*注3)

そのほか、流行期に海外渡航の予定がある方や家禽類を扱う方は、SARSや鳥インフルエンザ対策の面から、接種が望まれます。 

*注1 妊婦 インフルエンザの予防接種は、妊娠の全期間を通し母児に対する安全性が確認されています。妊娠しますと、インフルエンザによる入院のリスクは、約5倍(気管支喘息や糖尿病等の慢性疾患を有する、非妊娠時の女性と同等のハイリスク)になります。今シーズンから、米国CDCは、「インフルエンザ流行期に妊娠しているであろう女性」に対して接種を勧告しています。つまり、現在妊娠している女性ばかりでなく、妊娠予定の女性も対象になります。ちなみに、昨シーズンまでは、インフルエンザの流行期に妊娠14週以後に入る女性は、インフルエンザの予防接種を受けるべきであることが、米国CDCによって勧告されていました。その場合でも、インフルエンザの流行期間は12月末から4月上旬までの約14週ですので、流行前に妊娠が判明した女性は、ほぼ全てが対象となります。
なお、現在妊娠していて、インフルエンザの流行期の前に出産予定の場合には、その女性本人はハイリスクには該当しないことになります。が、もしも出産後にインフルエンザに罹患した場合には、新生児・乳児に伝染させてしまう可能性が高いのです。新生児・乳児を危険から守るためには、インフルエンザ流行前(つまり妊娠期間中)にインフルエンザワクチン接種を受け、感染源にならないように努めることが重要なのです。
また、妊娠中の抗インフルエンザウイルス薬の投与は安全性が未確認ですので、インフルエンザに罹ってから抗インフルエンザウイルス薬で治療すれば良いというのは、全く誤った考え方です。

*注2 6ヶ月から5歳以下の乳幼児、特に6ヶ月から23ヶ月の乳幼児 6ヵ月から5歳以下の乳幼児、特に6ヶ月から23ヶ月の乳幼児は、インフルエンザによる重い合併症や入院のリスクが非常に高く、65歳以上の高齢者と同程度にハイリスクであることが報告されています。乳幼児に対するインフルエンザワクチンの効果は、学童や成人などと比較してやや弱いものの、6ヶ月から23ヶ月の乳幼児への接種は十分有効であることが報告されています。米国では、2003年5月から、定期接種にインフルエンザワクチンが導入されました(対象は、6ヶ月から23ヶ月の乳幼児、および同居する18歳以下の兄弟)。
日本でも、乳幼児に対するインフルエンザワクチンの効果について、現在試験が進行中ですが、中間報告の段階では有効性が報告されています。
*注3 乳幼児(0〜23ヵ月、特に0〜5ヵ月)の同居者および保育者 生後6ヵ月以上の乳幼児に対しては、上述の通り、インフルエンザワクチン接種が奨められています。しかし、乳幼児の場合、成人などに比較して効果が弱いため、家族など同居者全員が揃って接種を受け、家庭内にインフルエンザを持ち込まないようにすることが大切なのです。
なお、生後6ヵ月未満の乳児(つまり、生後0〜5ヵ月の乳児)も、インフルエンザに罹患した場合には、重篤化する危険性が高いと考えられています。しかし、6ヵ月未満の乳児に対するインフルエンザワクチンの効果は確立していないため、通常は、接種を行いません。そのため、同居する家族および保育担当者(ベビーシッターや保育師など)が全員揃ってインフルエンザワクチン接種を受け、感染源にならないように努めることが重要なのです。

なお、1歳未満の乳幼児に対する抗インフルエンザウイルス薬の投与は安全性が未確認であり、罹ってから抗インフルエンザウイルス薬で治療すれば良いというのは、全く誤った考え方です。
また、日本で、乳幼児での多発が問題になっているインフルエンザ脳症は、進行が極めて激烈です。インフルエンザ発病から、わずか3時間で脳症を発症した症例もあるのです。したがって、インフルエンザワクチンの接種を奨めずに、インフルエンザに罹ってから抗インフルエンザウイルス薬で治療すれば良い、などとというのは、全く誤った考え方である、と言えるでしょう。
インフルエンザワクチンが、インフルエンザ脳症を防ぐことができるかどうかは、現在のところ実証されてはいません。しかし、インフルエンザに罹患しない限り、インフルエンザ脳症を発症することはあり得ません。したがって、インフルエンザワクチンによってインフルエンザを予防することが、インフルエンザ脳症の予防の点からも、極めて重要である、と言えるでしょう。
乳幼児は受けるべき予防接種が複数ありますので、上手にスケジュールを組んで、インフルエンザワクチンも是非受けるようにしましょう。

インフルエンザワクチン接種後の神経系の副反応報道(インフルエンザワクチンとGBSとの関連)について

2002年冬、新聞などマスコミ各社により、インフルエンザワクチン接種後の起立困難などの神経系の副作用が報道されました。これは、ギラン・バレー症候群GBSのことを指しています。GBSは、カンピロバクター・ジェジュニ菌(動物の腸管に生息する細菌で、不完全な調理によって摂取すると食中毒を生じる)や種々のウイルスなどの感染後に発症する、自己免疫性の多発性神経根炎です。インフルエンザワクチンとGBSの関連についての話題は、1976年までさかのぼることができます。その当時、米国で使用されたブタインフルエンザワクチンの接種後にGBSが発症したことが報告されましたが、詳細な調査により、頻度は100万人接種あたり10人未満であり、これは、GBSの自然発症率と全く有意差がなかったことが明らかにされました。その後、現在と同じワクチンが使用されるようになってからの調査では、100万人接種あたり1人の頻度と報告されましたが、これも、GBSの自然発症の頻度と有意差を認めませんでした。GBSの原因になり得る感染症は多数あり、インフルエンザワクチンが原因であると特定された例は、これまでのところありません。
インフルエンザワクチンの有効性・安全性については、すでに十分実証されています。インフルエンザワクチンの接種に反対する考えを持つ、極一部の人たちがいることは事実ですが、世界的にはインフルエンザワクチンとGBSとの関連性はほとんどないと考えられています。インフルエンザに罹患した場合に起こる健康被害のほうが、はるかに重篤であり、はるかに高頻度です。極一部の人たちの誇張された煽動には乗らないのが、賢明です。

ワクチンに含有される水銀について

インフルエンザワクチンのみならず、日本脳炎ワクチン・3種混合ワクチンDPTなどには、以前から、防腐剤として水銀製剤の一種であるチメロサールが含有されています。確かにチメロサールは水銀製剤の1つですが、現在までに知られているのは、局所の発赤や腫脹程度であり、重篤な副作用や長期的な健康被害は、世界中で全く報告がありません。米国でも、これまでチメロサールは使用されています。ワクチンに含まれる水銀量は10ppm程度と極めて微量(およそ魚1g程度)であり、蓄積等による、健康への影響はないとされています。チメロサールを含有するワクチンは1930年ごろから使用されていますが、これまでのところ、チメロサールによる重篤な副作用や水銀の蓄積による長期的な健康被害の報告は一切なく妊娠女性に接種しても安全性には何ら問題ないと報告されています。しかし、言い方を変えれば、まだ70年ほどしか使用されていないので、100%安全かどうかはわからない、という考え方に基づいて、米国と同様に、日本においても、チメロサールは、次第に減量されてきており、将来的には中止の方向にあります。2003-2004シーズンからは、チメロサールを含有しないインフルエンザワクチンも発売されました。つまり、長期的な健康障害を生じる証拠は一切ないものの、使わずに済むならば、使わないほうがより望ましいだろう、という考え方です。
改めて言うまでもないことですが、日本人の場合は、日常的に魚をたくさん食べますので、ワクチンに含まれるよりもはるかに多量の水銀を日常的に摂取していることになります。

2004-2005シーズンの流行前のインフルエンザの抗体保有状況(IDSC 免疫状況)(最終報、平成16年12月17日現在)

国立感染症研究所感染症情報センター発表の、2004-2005シーズンの流行前の抗体保有状況は、以下の通りでした。

A/ソ連型は、5-19歳では約50%の抗体保有率ですが、乳幼児(4歳以下)は特に低く、成人(20歳以上)も低い保有率でした。
A/香港型は、5-19歳では約70%の抗体保有率ですが、乳幼児(4歳以下)および成人(20歳〜59歳)では低い保有率でした。
B型は、B/Shanghai/361/2002(山形系、ワクチン株)については、15〜19歳群(50%)と10〜14歳群(39%)は比較的高い保有率でしたが、それ以外の年代では低く、特に乳幼児(4歳以下)と50代群極めて低い保有率でした。
一昨シーズンに流行したB/Brisbane/32/2002(Victoria系、非ワクチン株)については、全年齢層で極めて低い保有率でした。

有効防御免疫の指標とみなされるHI抗体価40以上の抗体保有率(約%)

         

0-4歳

5-19歳

20-39歳

40-59歳

60歳以上

A/New Caledonia/20/99(H1N1)
A/ソ連型 ワクチン株

10

46-55

20-33

18-22

22

A/Wyoming/3/2003(H3N2)
A/香港型 ワクチン株

28

51-77

20

20

33

B/Shanghai/361/2002
B/山形系 ワクチン株

3

21-50

27-21

7-16

12

B/Brisbane/32/2002
B/Victoria系 非ワクチン株

2

3

2-7

12

8

(4) 慢性疾患のある人や65歳以上の人は、肺炎球菌ワクチンの接種を受けましょう。

肺炎は、日本人の死因の第4位を占めます。
肺炎の最大の原因は、肺炎球菌です。
肺炎球菌ワクチンの接種により、肺炎などの肺炎球菌感染による入院・死亡を予防できます
肺炎球菌ワクチンは1回の接種で約5〜6年効果があります。インフルエンザの予防接種との間隔は、1週間以上あければ可能です。
また、肺炎球菌ワクチンは1年を通し、安定供給されていますので、いつでも受けられます。

(5) A群溶連菌感染症およびマイコプラズマ肺炎が流行

A群溶連菌感染症は、最近10年間で最大規模の流行状況です。
A群溶血性レンサ球菌による感染症は、菌の侵入部位や組織によって多彩な臨床症状を引き起こします。
急性咽頭炎・扁桃炎・膿痂疹・蜂巣織炎・(特殊な病型として)猩紅熱、などが、良く見られます。そのほか、中耳炎・肺炎・化膿性関節炎・骨髄炎・髄膜炎なども生じます。
さらに、菌の直接の作用ではなく、免疫反応によって、リウマチ熱や急性糸球体腎炎を続発すことが知られています。
例年、12月・3月・6月に、3峰性のピークを形成しますので、十分な警戒が必要です。
的確な診断と治療により、リウマチ熱・急性糸球体腎炎などの合併症を防ぐことが重要です。
初夏から夏にかけて、アデノウイルス感染症(咽頭結膜熱=プール熱など)も、最近10年間で最大規模の流行を示しましたが、秋に入り、減少しています。
A群溶連菌感染症およびアデノウイルス感染症は、いずれも、著しい咽頭炎所見が良く類似しており、的確な診断のため、迅速抗原検査や細菌培養検査などを行うことが必要です。

マイコプラズマ肺炎の流行が続いています。
マイコプラズマ肺炎は激しい咳が特徴ですが、肺炎を生じている割には比較的元気があり、ほとんどの場合、聴診音に異常がありません。また、時には、発熱のみで、咳がほとんど出ない例もあります。そのため、しばしば、普通感冒と誤診されることがあります。
夜眠れないれないような咳が出ている場合や高熱が出ているなどの場合には、胸部X線検査やマイコプラズマ抗体価などの血液検査を受けるようにしましょう。

(6) 日本甲状腺学会専門医および日本甲状腺学会認定専門医施設について  

甲状腺の病気は、患者さんの数は多いのですが、比較的特殊な領域のため、誤診・誤治療が後を絶たないのが実情です。
誤診・誤治療を防ぐためには、甲状腺専門医による的確な診断と正確な治療方針の決定が要求されます。

日本甲状腺学会は、日本甲状腺学会専門医制度を定め、日本甲状腺学会のホームページで公開しています。

さらに、日本甲状腺学会は、甲状腺診療専門医の養成と診療の専門化をはかり、国民の健康維持・増進に寄与するために、日本甲状腺学会認定専門医施設を定め、日本甲状腺学会のホームページで公開しています。

(7)抗甲状腺薬メルカゾールによる副作用について(田尻クリニックのHPから引用・改変しています)

平成16年2月、メルカゾール(一般名:チアマゾール)による副作用である無顆粒球症について、再び、安全性情報が出されました。

平成14年12月にも、下記の通り、メルカゾールによる無顆粒球症についてマスコミで報道されました。
厚生労働省は安全性情報を出し、医師に注意を呼びかけましたが、残念ながら、その後も死亡例が報告されました。
そこで、今回、メルカゾールによる無顆粒球症について、再び注意を喚起し、適正な使用を促すため、改めて、安全性情報が出されたものです。

今回の改正点は、以下の2点です。

1点目は、メルカゾールによる無顆粒球症は服用開始2ヶ月以内に現われることが多いため、少なくとも投与開始から2ヶ月間(再投与の場合を含む)は、原則として2週間1回血液検査を行い、白血球数および白血球分画を確認すること。その後も、定期的に血液検査を行い、白血球数および白血球分画を確認すること。

注釈 白血球は、顆粒球(=好中球)・リンパ球・好酸球・好塩基球・単核球等の種類に分けらます。これらの比率を表す検査が白血球分画です。白血球数は4,000〜8,000/mm3、顆粒球は2,000〜4,000/mm3が正常値です。顆粒球が500/mm3未満に減った状態のことを、無顆粒球症と呼びます。

2点目は、無顆粒球症について、投与前、十分に説明すること。

メルカゾールを投与される患者さんは(再投与の場合を含む)、医師から副作用についてよく説明を受けることが大切です。
副作用の説明なしにメルカゾールを処方された場合には、その医師に副作用について十分な説明を求めてください。
今回、メルカゾールによる副作用である無顆粒球症について、服用前に説明するよう医師に注意を喚起していますので、患者さんもそのことをよく知っておいていただきたいと思います。
また、安全に使用するためには、定期的な血液検査が不可欠ですので、十分ご理解ください。

メルカゾールは、甲状腺機能亢進症の治療薬(抗甲状腺薬)です。平成13年12月13日付の厚生労働省の医薬品・医療用具等安全性情報で、メルカゾールによる白血球の減少などの副作用について注意が促されました。この内容が、同日夕方のNHKニュースおよび翌日の新聞各紙朝刊で、「バセドウ病の治療薬で死亡」とセンセーショナルに報道されました。

例えば、毎日新聞は、『甲状腺治療薬:バセドウ病「チアマゾール」で7人死亡』
バセドウ病など甲状腺機能障害の治療薬「チアマゾール」(商品名・メルカゾール錠)の服用後、白血球減少などから最近5年間で7人が死亡していたことが分かり、厚生労働省は13日、医薬品・医療用具等安全性情報で医療関係者などに注意を呼び掛けた。チアマゾールは1956年に発売され、錠剤で年間の使用患者数は約16万4000人と推定される。服用後、副作用の可能性がある白血球の減少などから、感染症を引き起こして死亡する例が相次いだため、定期的な血液検査などを行うよう「使用上の注意」に盛り込まれた。
と報道しています。

しかし、この重い副作用(抗甲状腺薬による無顆粒球症)は、今回新たに判明したものではなく、従来から甲状腺専門医には、最もよく知られているものなのです。このような無責任な報道の結果、患者さんが勘違いしてメルカゾールを自己判断で中止することが心配されます。

甲状腺専門医は、メルカゾール治療の開始前には必ず、「突然のどが痛くなり38℃以上の高熱が出たら、かぜと即断せずにすぐに受診して下さい。血液検査で白血球数や顆粒球数が減っていれば、服薬を中止し、適切に治療すれば、生命を脅かすことはありません。」と、十分に説明を行っています。
白血球数は4000-8000/mm3、顆粒球数は2000-4000/mm3が正常値です。顆粒球数500/mm3未満を無顆粒球症と呼びます。抗甲状腺薬による無顆粒球症は、ほとんどの場合、服用開始2-3ヶ月以内に起こり、それ以後に生ずることはまれです。そのため、特に投与開始後少なくとも2ヶ月以内は2週間に1回、その後も定期的に血液検査を行い、白血球数・白血球分画(=顆粒球数がわかる検査)を確認しながら、治療を行います。
抗甲状腺薬にはメルカゾールとプロピールチオウラシル(プロパジールまたはチウラジール)の2種類があります。今回の報道では、メルカゾールのみが取り上げられましたが、プロピールチオウラシルでも同じ頻度(0.3-0.4%)で無顆粒球症がみられます。
顆粒球は細菌を殺す働きをしていますので、顆粒球が減りますと細菌が感染して扁桃腺炎などを起こし、38℃以上の高熱を生じます。医師がこの副作用について説明していませんと、患者さんはかぜと思ってしまい(抗甲状腺薬の副作用と思わずに)、抗甲状腺薬の服用を続けます。そうしますと、顆粒球が0近くまで減り、細菌が血液中に入り込んで敗血症という重篤な病気になります。死亡した人たちは、この状態になった人たちです。
本来ならば、副作用についてきちんと説明し、定期的な血液検査を行っていれば、避けられたはずです。甲状腺専門医は、抗甲状腺薬を投与する際には、必ず副作用について説明を行い、定期的な検査を行いながら治療を行っていますので、くれぐれも自己判断でメルカゾールを中止しないようにしましょう。

(8) SARS(重症急性呼吸器症候群)について

現在、SARSの流行はありませんが、中国で再びSARS患者の散発的な発生が報告されており、再流行が懸念されています。
SARSは感染力が強く、生命に関わる危険性のある重大な感染症です。以下の条件が当てはまる場合はSARSが疑われます。  

   (1) 症状出現前10日以内に、SARSの流行地域に滞在、または、SARS患者と接触
   (2) 発熱(通常は38℃以上)
   (3) 咳や息切れなどの呼吸器症状

SARSが疑われる場合は、必ず最寄りの保健福祉事務所に電話で連絡の上、指示に従ってください。事前の連絡なしに医療機関を直接受診することは絶対にしないでください。感染防止のため必ずマスクを着用してください。また、公共の交通機関(電車・バス・タクシーなど)は利用しないでください。

SARS流行状況はその時々で変化しています。国立感染症研究所感染症情報センター などで最新情報を確認してください。なお、滞在期間中にその地域が流行地域に指定されていたかどうかが最も重要です。現在の流行状況のみでなく、過去10日間の情報をあわせてご覧ください。

最近の情報
2003年12月17日、台湾の衛生当局は、国防医学院予防医学研究所の男性研究員(44歳)がSARSに感染したことを発表。症例は、SARS治療薬の研究に従事し、12月10日から高熱・下痢などの症状が現われ、2回のSARSコロナウイルス検査で陽性が確認されたため、12月17日から台北市内の病院で隔離入院治療を受けました。接触者追跡調査も行なわれ、2次感染例はありませんでした。

2003年12月27日、中国衛生部は12月26日午後、衛生部と広東省の専門家グループによりSARS疑い例(32歳、男性)を確認、広州市第八人民医院で隔離治療中であることが明らかになりました。接触者81人の追跡調査も行なわれました。この事態を受け、WHOは専門家を中国に派遣、29日広東州に到着、SARS疑い例の発生状況などの調査のほか、接触者の観察、院内感染の抑制などで支援に当たっています。2004年1月2日、原因ウイルスは、昨年流行したSARSコロナウイルスとは遺伝子が若干異なる(相同性は98.8-99.4%)変異型SARSコロナウイルスであることが判明しました。その後、患者は完全に回復し、接触者の観察期間も終了し、2次感染はありませんでした。

2004年1月8日、中国保健当局は、広東省のSARS疑い症例(河南省出身、広州市の野生動物を扱うレストラン勤務の20歳女性)について発表。患者は12月25日に体調不良を覚え、翌日発熱、31日に医療機関を受診し、同日から隔離治療を受けていました。この患者は、中国のSARS専門家委員会によってSARS疑い症例と診断。その後疫学的調査と臨床検査が行れ、SARSと確定。合計100人の接触者が追跡調査され、2次感染例はありませんでした。

2004年1月12日、中国衛生省は、SARSに感染した疑いがあると香港衛生当局に指摘されていた広東省広州市の男性(35歳)について、SARS疑い症例と認定。患者は、野生動物などとの接点はありませんでしたが、2003年12月31日に発熱などの症状を訴え、2004年1月6日から病院で隔離治療を受けていました。1月12日午前、SARS疑い症例と診断されました。2004年1月17日、SARSと確定。接触者が追跡調査され、2次感染例はありませんでした。

北京の国立ウイルス学研究所の研究者が2名、2004年3月末と4月中旬にSARS発症。この集団発生は4月22日に報告され、翌日研究所は閉鎖されました。さらに、接触者にも感染が拡がりました。
その後、4月22日以来、北京市から7例のSARS確定例(すでに全員治癒退院)、安徽省から2例の確定例(1名は治癒退院、他の1名は死亡)が報告され、他の省からのSARS確定例および疑い例の報告はありませんでした。5月21日に北京市の最後のSARS症例が退院。北京市の747名の密接接触者は、5月23日までに全員隔離を解かれました。

SARSを指定感染症として定める等の政令(平成15年政令第304号)が、2003年7月4日公布、同年7月14日施行されました。
さらに、
感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律及び検疫法の一部を改正する法律(平成15年法律第145号、平成15年11月15日施行)により、SARSは、1類感染症に指定されました。これまで1類感染症には、エボラ出血熱、クリミア・コンゴ出血熱、ペスト、マールブルグ病、ラッサ熱が指定されており、SARSは6個目の1類感染症になりました。
SARSの疑似症患者もSARS患者とみなすこと、無症状病原体保有者は患者とみなさないこと、と規定されています。医師は、SARS(疑似症患者を含む)と診断した場合は、直ちに、最寄りの保健所長を経由して都道府県知事に届け出る義務があります。SARS患者(疑似症患者を含む)は、SARSを蔓延させる恐れがなくなるまでの期間の就業が禁止されます。都道府県知事は、SARS患者(疑似症患者を含む)に入院を勧告でき、勧告に従わない場合は、入院させることができます。また、イタチアナグマ、タヌキ及びハクビシンの輸入が禁止され、獣医師は、イタチアナグマ、タヌキ及びハクビシンをSARS(疑いを含む)と診断したときは、直ちに、届け出る義務があります。

SARS対策として、インフルエンザワクチンの接種が推奨されています。
この冬、SARSとインフルエンザの同時流行が危惧されています。SARSとインフルエンザは、初期症状が類似しており、同時流行した場合には、鑑別が難しいため、大混乱を生じることが予測されます。インフルエンザワクチンは、SARSの感染を直接防ぐことはできませんが、接種を受けることによりインフルエンザの可能性が少なくなり、SARSとインフルエンザの鑑別が行ない易くなると考えられています。SARS対策の観点からも、インフルエンザワクチンの接種が、WHOにより推奨されています。特に医療従事者は、SARSおよびインフルエンザの両者の感染を受けるリスクが高いため、是非インフルエンザワクチンの接種を受けるように、強く推奨されています。さらに、SARSの重症化のリスクが高い高齢者および基礎疾患を有する方たちも、SARS対策の観点からも、インフルエンザワクチンの接種を受けることが推奨されています。また、WHOの推奨には入っていませんが、インフルエンザ流行期に中国などへの海外渡航の予定がある方も、インフルエンザワクチンの接種を受けることが望ましいと考えられます。

(9) インフルエンザ(2003−2004シーズン)のまとめ

2003-2004シーズン最初のインフルエンザによる学級閉鎖は、群馬県内の小学校で2003年11月18日から行われ、以後、群馬県内各地で複数の学級閉鎖が行われました。

全国的に見ますと、国立感染症研究所感染症情報センターによれば、2003-2004シーズンは、主に、AH3型ウイルスの流行でした。

AH3型ウイルスの流行は第5週にピークとなり、ピークの高さは2002-2003シーズンに匹敵し、2002-2003シーズンよりも小規模ではありましたが、大きな流行であったと考えられます。

AH1型ウイルスは、散発的な流行が見られたものの、大きな流行は見られませんでした。

B型ウイルスは、第36週に沖縄県、第43週に愛知県で分離され、以後、持続的に小規模な地域的流行が各的で見られました。
第12週以後も、B型ウイルスの地域的流行が断続的に報告されており、大きなピークを形成しないものの、感染者数は少なくはなかったと考えられます。

インフルエンザ様疾患による学級閉鎖は、2002-2003シーズンよりも小規模ではありましたが、全国的には、例年並の件数でした。

WHOによれば、2003-2004シーズンの北半球でのインフルエンザは、大半はインフルエンザA(H3N2)ウイルスによる大きな流行が見られました。
その大部分のウイルス抗原型は、非ワクチン株のA/Fujian/411/202類似ウイルスであることが確認されました。次いでワクチン株と同じA/Panama/2007/99類似ウイルスも確認されましたが、比較的少数でした。。

インフルエンザBは、アジア(香港、韓国、タイ)から最も頻繁に報告され、ヨーロッパと北米からは散発例でした。
A(H1)の患者発生は、アイスランドで41-46週の流行を除き、世界からの報告はまれでした。

宮下クリックでは、下表のように、2003年11月12日からインフルエンザ患者を確認しました。

インフルエンザ患者の約80%はワクチン未接種者でした。なお、定期通院中のハイリスク者は大部分予防接種を受けており、ほとんど罹患しませんでした。(ワクチン接種者約700名の罹患率は、約5%でした。)
なお、2002-2003シーズンの治療成績から、迅速検査とPCR法によるインフルエンザウイルス遺伝子検出は非常に良く一致し、感度および特異性は90%以上であること、発症から3時間という発病の極早期でも迅速検査で明らかに陽性に検出されることが、確認されています。

宮下クリニックにおけるインフルエンザ患者数(発症48時間以内に迅速検査で陽性を確認)
  ただし、( )内は小児の患者数

 

47W

11/17-11/23

48W

11/24-11/30

49W

12/01-12/07

50W

12/08-12/14

51W

12/15-12/21

52W

12/22-12/28

53W/1W

12/29-01/04

A

---

---

1(0)

5(3)

16(15)  

17(6)

0(0)

B

---

---

---

0(0)

1(1)  

3(1)

0(0)

型不明

1(0)

1(1)

1(1)

---

---

---

---

                         * 型判別できないタイプの検査キットを使用

 

2W

01/05-01/11

3W

01/12-01/18

4W

01/19-01/25

5W

01/26-02/01

6W

02/02-02/08

7W

02/09-02/15

8W

02/16-02/22

9W

02/23-02/29

10W

03/01-03/07

11W

03/08-03/14

A

7(2)

3(0)

13(4)

27(16)

21(8)

20(13)

12(6)

3(1)

3(1)

1(1)

B

0(0)

0(0)

0(0)

1(0)

2(0)

0(0)

2(0)

2(1)

1(1)

2(1)

 

12W

03/15-03/21

13W

03/22-03/28

14W

03/29-04/04

15W

04/05-04/11

16W

04/12-04/18

17W

04/19-04/25

18W

04/26-05/02

19W

05/03-05/09

20W

05/10-05/16

A

4(2)

0(0)

0(0)

0(0)

0(0)

0(0)

0(0)

0(0)

0(0)

B

3(0)

0(0)

1(1)

0(0)

0(0)

1(0)

0(0)

0(0)

0(0)

2003-2004シーズンの流行前のインフルエンザの抗体保有状況(IDSC 免疫状況)(平成15年11月20日現在)

国立感染症研究所感染症情報センター発表の、2003-2004シーズンの流行前の抗体保有状況は、以下の通りでした。

A/ソ連型は、5-19歳では約50%の抗体保有率ですが、乳幼児(4歳以下)および成人(20歳以上)では低い保有率でした。
A/香港型は、5-19歳では約70%の抗体保有率ですが、乳幼児(4歳以下)および成人(20歳〜59歳)では低い保有率でした。60歳以上では約45%の抗体保有率ですが、ワクチン接種によってさらに上げることが重要です。
B型は、すべての年齢層で、低い保有率でした。

有効防御免疫の指標とみなされるHI抗体価40以上の抗体保有率(約%)

      

0-4歳

5-19歳

20-39歳

40-59歳

60歳以上

A/New Caledonia/20/99 (H1N1)
A/ソ連型 ワクチン株

20

50-55

15-20

5-15

18

A/Panama/2007/99 (H3N2)
A/香港型 ワクチン株

25

70

30-35

20-25

45

B/Shandong/7/97
B/Victoria系 ワクチン株

5未満

5-10

15-20

5未満

15

B/Shanghai/44/2003
B/Yamagata系 非ワクチン株

5未満

15-35

10

5未満

5未満

鳥インフルエンザウイルス感染(2003−2004シーズン)

鳥インフルエンザウイルスA(H5N1)は、ニワトリの間で急激に拡大し、ニワトリでの死亡率はほぼ100%です。

日本では、1925年の発生例からH7N7のインフルエンザウイルスが分離されており、それ以降は発生がありませんでした。

2004年1月、山口県で鳥インフルエンザウイルスH5N1亜型による発生が79年ぶりに確認されました。同年2月には、大分県で愛玩鳥のチャボ、京都府の採卵鶏農場で同亜型による発生し、社会問題にもなりました。また京都と大阪では死亡したカラスからも、H5N1亜型鳥インフルエンザウイルスが分離されました。

最近の世界での主な発生例としては、香港(1997年、H5N1)、オーストラリア(1997年、H7N4)、イタリア(1997年、H5N2)およびイタリア(1999年、H7N1)、オランダ(2003年、H7N7)、韓国(2003年、H5N1)などがあげられます。

特に2003−2004シーズンは、2003年12月に韓国の農場での発生が報告されたことに始まり、高病原性鳥インフルエンザH5N1型感染が、日本を含めアジア各国で確認されました。
2004年3月30日時点で、家きんの鳥インフルエンザ感染例の報告をした国は、ベトナム・タイ・カンボジア・ラオス・インドネシア・中国・台湾・韓国・日本・米国(以上H5亜型)、パキスタン・オランダ・カナダ・米国(以上H7亜型)です。が、病原性の程度も異なったウイルス型の集団発生も混在して起こっており、これら各国のすべての例が高病原性の鳥インフルエンザウイルスと確認されたわけではありません。
中国(本土)・ベトナム・タイでの被害は大きく、ブタやアヒルも感染が報告され、特に中国では900万羽以上が死亡あるいは殺処分されたと報告されています。

2003−2004シーズンのように多くの国で同時に集団発生がみられた例はこれまでに無く、特にその多くが、すでに種を超えて感染を始めた高病原性のH5N1型であることが、強く懸念されています。

2003年10月から、ベトナムとタイでは、高病原性鳥インフルエンザH5N1亜型のヒトへの感染が発生し、死者が発生しました。
死亡例の解剖所見では、呼吸器の障害のみならず、多臓器不全を生じていたことが報告されており、極めて強い毒性を有することが明らかになっています。

2003年12月、香港で、鳥インフルエンザA(H9N2)のヒトへの感染例が報告されました。
今回の例は、これまでに香港でヒトからH9N2ウイルスが分離された2例目で、前回の発生は1999年でした。

2004年3月、カナダで、鳥インフルエンザA(H7)のヒト感染(結膜炎など)がありました。

現時点では、鳥インフルエンザウイルスAの、ヒトからヒトへの感染の証拠はなく、医療従事者の感染の報告もありません。

しかし、今後、ヒトあるいは動物の体内で、A(H5N1)ウイルス等の鳥インフルエンザウイルスAが変異を生じ、ヒトからヒトへの強い感染力を獲得し、強い病原性によって、世界的に甚大な被害を引き起こす危険性が懸念されています。

A(H5N1)ウイルスのヒトの大流行に備えるため、A(H5N1)ワクチンの開発が着手され、すでに概ね成功しています。が、特許の問題があり、実際にワクチンが製造・供給されるためには、いくつもの障害が存在し、大きな問題になっています。

抗インフルエンザウイルス剤は、ノイラミニダーゼ阻害剤のオセルタミビルが、感染防止および治療に有効と考えられていますが、日本国内では、予防投与は認可されてません。
一方、ベトナムで流行していたH5N1型は、M2タンパク阻害剤の耐性遺伝子を持っているため、、M2タンパク阻害剤のアマンタジンは無効と考えられています。

(10) コンフリーによる肝機能障害

コンフリー(別名ヒレハリソウ)Symphytum spp.が原因と考えられる肝機能障害が、海外で多数報告されています。
日本国内でも、コンフリー使用した健康食品等がインターネットで販売されていること、広く家庭菜園にも普及ていることなどから、
平成16年6月14日、厚生労働省は、コンフリーの取り扱いについての留意事項を発表しました。
以下は、その抜粋です。

(11) 中国製ダイエット薬による甲状腺障害・肝機能障害・死亡について

中国製のダイエット商品によって甲状腺障害・肝障害が多発し、死亡者が発生しています。
2002年7月12日に、因果関係が疑われる2つの商品名が厚生労働省から公表されました。「御芝堂(おんしどう)減肥膠嚢(げんぴこうのう)」(発売元・広州御芝堂保健制品有限公司)と「繊之素膠嚢(せんのもとこうのう)」(同・広東恵州市恵宝医薬保健品有限公司)の2つです。さらに、2002年7月21日までに以下の6商品名が追加公表されました。オロチンチャス茶素膠嚢、軽身楽牌減肥膠嚢SITING美麗痩身茶素減肥チャレンジ・フォーティーワン。いずれも、薬事法で国内販売が禁じられた「未承認医薬品」です。これ以外にも、その後の調査により、続々とに類似商品が発見され、公表されています。

繊之素膠嚢などからは、(動物の)甲状腺末や食欲抑制剤フェンフルラミンが検出され、さらに発癌性が疑われるニトロソフェンフルラミンも検出されたとのことです。以前から繊之素膠嚢は、(含有する動物の甲状腺末のため)服用によって甲状腺機能亢進症の症状を発症する患者が出ており、2000年12月と2001年6月には厚生労働省が、都道府県に監視の強化を指示してました。また、フェンフルラミンは、薬剤として認可されたものではなく、海外などでやせ薬として販売されているものが個人輸入されたり、また、今回のように、健康食品に意図的に混入されたりしているようです。フェンフルラミンは、心臓弁膜症や肺高血圧症という重い副作用が多数報告されており、国内では1996年にフェンフルラミンを含有する中国製ダイエット商品「寧紅新減肥茶」の輸入・販売が規制され、米国では医師の処方薬だったフェンフルラミンの販売が1997年に禁止されています。これまでの調査から、今回の肝機能障害の原因は、ニトロソフェンフルラミンである可能性が高いことが、示唆されています。   

同様の商品が、別名(漢方薬名とは限らない)でも販売されている可能性が濃厚です。
中国製のダイエット商品を服用した人は、早急に、医療機関を受診して検査を受けてください。受診する際には、服用した商品・説明書・パッケージなどが残っていれば、ぜひ、持参してください。

(12) 2002-2003シーズンのインフルエンザのまとめ

2002-2003シーズンは、主にA香港型にB型、一部でAソ連型が混合して流行しました。例年に比べて流行開始が約1ヶ月以上早く、また、流行規模が大きかったことが特徴です。
2002-2003シーズンの定点当たり報告数の推移では、2002年第50週に1.0を超えた後急増し、2003年第4週38.7をピークに減少に転じました。感染症法施行後の過去4シーズンとの比較では、ピークが早めでピーク値も大きかったことがわかりました。それ以前のシーズンとは定点設計が異なるため、単純比較はできませんが、過去10シーズンでは1994-1995シーズン、1997-1998シーズンのピーク値は50以上でしたので、これに比べれば2002-2003シーズンのピークは小さかったと言えます。
2003年第5週以降、定点当たり報告数は減少しましたが、第8週から第11週にかけて減少が鈍化しました。これは、先行したAH3型ウイルスによる流行が第4週をピークに順調におさまっていったのに対し、遅れて始まったB型による流行が比較的長引いたためと考えられます。
ウイルスの分離報告では、2003年5月18日までに、AH3型ウイルスは計4,696件(PCRのみの検出31件を含む)報告され、このうちN 型別された236件はすべてN2でした。B型ウイルスは計2,218 件(PCRのみの検出20件を含む)報告され、AH1型ウイルスは、2003年第10週に滋賀県から1 件報告されたのみでした。

宮下クリックでは、下表のように、2002年11月12日からインフルエンザ患者を確認しました。

患者の約95%はワクチン未接種者であり、4歳以下+成人で全体の90%以上を占めました。なお、定期通院中のハイリスク者は大部分予防接種を受けており、ほとんど罹患しませんでした。(ワクチン接種者約600名の罹患率は、約5%でした。)
なお、迅速検査と共にPCR法によるインフルエンザウイルス遺伝子の検出もあわせて行ないましたが、結果は非常に良く一致し、感度および特異性は90%以上でした。ちなみに、発症から3時間という発病の極早期でも、迅速検査で明らかに陽性に検出されました。

宮下クリニックにおけるインフルエンザ患者数(発症48時間以内に迅速検査で陽性を確認)
  ただし、( )内は小児の患者数

  

46W

11/11-11/17

47W

11/18-11/24

48W

11/25-12/01

49W

12/02-12/08

50W

12/09-12/15

51W

12/16-12/22

52W

12/23-12/29

53W/1W

12/30-01/05

2W

01/06-01/12

3W

01/13-01/19

A

0(0)

0(0)

0(0)

1(1)

1(0)

0(0)

5(3)

2(1)

8(4)

11(4)

B

3(1)

3(3)

1(1)

0(0)

2(1)

1(1)

0(0)

0(0)

0(0)

5(2)

 

4W

01/20-01/26

5W

01/27-02/02

6W

02/03-02/09

7W

02/10-02/16

8W

02/17-02/23

9W

02/24-03/02

10W

03/03-03/09

11W

03/10-03/16

12W

03/17-03/23

13W

03/24-03/30

A

10(2)

32(10)

20(12)

11(5)

6(5)

14(8)

12(6)

11(7)

10(6)

3(3)

B

7(3)

8(6)

8(4)

17(3)

13(5)

14(4)

9(3)

8(3)

11(5)

8(4)

 

14W

03/31-04/06

15W

04/07-04/13

16W

04/14-04/20

17W

04/21-04/27

18W

04/28-05/04

19W

05/05-05/11

20W

05/12-05/18

21W

05/19-05/25

22W

05/26-06/01

23W

06/02-06/08

A

1(0)

2(1)

2(0)

2(1)

0(0)

0(0)

0(0)

1(1)

1(0)

1(0)

B

9(3)

1(1)

6(0)

1(0)

3(0)

2(0)

2(0)

0(0)

1(0)

0(0)

2002-2003シーズンの流行前のインフルエンザの抗体保有状況(IDSC 免疫状況)

A/ソ連型およびA/香港型は、乳幼児(4歳以下)および成人(20歳以上)で、低い保有率でした。B型は、すべての年齢層で、低い保有率でした。

有効防御免疫の指標とみなされるHI抗体価40以上の抗体保有率(約%)

       

0-4歳

5-9歳

10-19歳

20-39歳

40-59歳

60歳以上

A/New Caledonia/20/99 (H1N1)
A/ソ連型 ワクチン株

20

40

40

10-17

5-10

10

A/Panama/2007/99 (H3N2)
A/香港型 ワクチン株

30

75

45-65

20

10-20

30

B/Shandong/7/97
B/Victoria系 ワクチン株

0

5

5-10

10-17

0

5

B/Shenzhen/407/2001
B/山形系 非ワクチン株

0

0

10

0-5

0

0